私は、マンションの管理組合の集会や説明会の場で、ことあるごとに「マンションの区分所有者は同じ船に乗った運命共同体だ」ということをお話しします。 でも、最初のうちは「運命共同体」ということが実感として伝わらないようです。

大半の区分所有者は、マンションや団地も戸建て住宅が上下に重なったもの、としか考えていないのでしょう。 権利というものは、まさに目に見えないものであるからです。
「運命共同体である」ということを法律的に表現すると、「共有関係」にあるということになります。 共有というのは、ひとつの物を複数の者でいっしょに所有するわけですから、他の所有者を無視して自分だけで勝手に処分することはできません。
マンションの住戸を想像してください。 例えばあなたは5階建てのマンションの3階にある住戸を所有しているとします。
その3階の住戸は、空中にぽっかりと浮いているわけではなく、敷地の上に建った大きなマンションの柱や床、天井、壁、廊下、階段などに支えられて存在しているのです。 同じように、その敷地や建物は他の区分所有者の住戸も支えているわけで、この土地や建物の骨格部分は、まさに区分所有者全員がみんなで一緒に所有している、これを「共有」と呼ぶのです。
マンションについて定めた区分所有法という法律では、区分所有者が管理組合という組織をつくり、総会での意思決定に基づいて管理を行うとしていますが、これも、土地建物の共有者である区分所有者が共有物の管理をより民主的に、円滑に行えるようにしたものです。 この点で、改築するのも建て替えるのも自由に行うことができる戸建て住宅と、総会での決議という他の共有者との基本的な合意H集団としての合意形成がなければ許されないマンションとは本質的に異なっているのです。
私たちは土地建物という資産の「保有」と居住という「利用」を多数者が共同で行う共同住宅の本質について、十分な研究や議論をする間もないままに、共同で住まうという現実を受け入れざるを得なかったのではないでしょうか。 もとより、都市の生活者の多くは地域のしがらみや人間関係に縛られない生活を自ら望み選んできた人たちです。
彼らにとって、鉄のドアで隔離されたマンシヨンとは、戸建て住宅以上に他人を意識せずに気ままに暮らせる住宅としての選択であったのかもしれません。 しかし、実際には好むと好まざるとに関わらず、マンションという大きな共同体の一員に組み込まれてしまう、これがおきていわばマンションの提であり、マンションのジレンマなのかもしれません。
今、私は「マンションの区分所有者は運命共同体だ」と書きました。 運命というのは、文字通り「自分の意志に関わらず」ということですが、経緯はともあれ、ひとつの共同体に組み込まれてしまった以上は、自分たちの意志で前向きにこの共同体を運営していくことができれば、マンションに住むことの価値は区分所有者全員にとって大きく変化することでしょう。
それが、マンションを「小さな自治体」にすることだと思います。 快適な生活を送るために欠かせない適切な管理を実現するためには、管理組合がしっかりと機能しなければなりません。
これは、まさにマンションが小さな自治体になることなのです。 団地やマンションが小さな自治体や民主主義の学校であるとよくたとえられますが、それは、自分たちの資産と生活を自分たちの手で自律的に管理し、守るという仕組みがもともと与えられているからなのです。

ットとデメリットマンションと戸建て住宅のそれぞれの特徴などについてここまでにお話してきたことをもとに、マンションと戸建て住宅の主な「メリットとデメリット」を次のように挙げてみました。 〈マンションのメリット〉
・多数者が権利を共有することで、効率的でスケール・メリットを活かした計画が可能である。
・事業規模が大きく、多数者が負担するため、設計費や工事費の個人負担は割安になる。
・管理は組合が行い(管理会社に委託)、効率的に行うことができる。 個人の負担は少ない。
〈マンションのデメリット〉
・基本的にデベロッパーが提供する既製品を選択して取得することになり、計画段階から参加する機会はない。
・土地建物を区分所有者で共有するため、区分所有権を処分することはできるが、基本的に土地と建物を分離して処分することはできない。
〈戸建てのメリット〉
・自ら土地を手当てして、施主として自由に計画を立てることが可能である。
売却する場合には、処分性が高い。
また、処分するのも建て替えるのも所有者が単独で自由に行うことができる。
〈戸建てのデメリット〉
・設計費や工事費などすべてが個人での単独負担となり、規模も小さいため割高になる。
・管理は個人で行う必要があり、煩雑であり、コストも割高になる。

以上はもちろん、あくまでもひとつの目安で、マンションや戸建て住宅といっても、都心の高級住宅地に建つものから郊外に建つものまで千差万別です。
しかしながら、大きな傾向としては次のようなことがいえそうです。 まず、マンションはデベロッパーが企画販売する多くの物件から選んで購入するため、どのマンションを選ぶかという自由はあっても、計画内容を自由に決めることはできません。
ただし、最近計画段階から参加する新しいタイプのマンション、コーポラティブ住宅というのも出てきています。 その反面、各デベロッパーは魅力ある商品とするため、スケール・メリットを活かした共用施設やさまざまなサービスの提供などの付加価値をつけて、差別化を図っています。
これに対して、戸建て住宅には建売りもありますが、自分で土地を用意して自分が理想とする家づくりを自由に行うことが可能です。 また、建売住宅の場合であっても、所有は単独ですから、処分や改修などは自分の判断だけで自由に行なうことができます。
その反面、調達できる資金には自ずと限界があるため、計画の内容は限られます。 また管理面でも自己責任が原則となります。
マンションを比較すると以上述べてきたことを、さらにわかりやすいように、戸建て住宅とマンションを比較した表をつくってみました(下表参照)。 表にある「コスト」とは、同規模の住宅を取得する費用を比較する項目です。
マンションは戸建てに比べてスケール・メリットがあるためコストは割安になるのが一般的です。 「管理」とは、建物などの維持管理の容易さを比較する項目です。

マンションでは、区分所有者個人が関与するのではなく、管理組合が管理費などを徴収して、管理会社などに委託して、実際の維持管理を実施する仕組みになっています。 したがって、個人の負担は軽いと思われます。
これに対して、戸建て住宅では資金の調達から業務発注まで個人の責任と権限で行うため煩わしきは避けられません。 「資産価値」とは、金銭化する場合の容易さや担保価値などを意味します。
土地に関する権利を見た場合に、戸建て住宅の方が高い独立性と処分性があるため資産価値は高いと考えられます。 「防犯安全性」と「耐震安全性」については、最新のマンションが新しいシステムを導入し、最も売りにしている部分であり、マンションが高い優位性をもっています。

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